否定的アプローチであるネギングと肯定的アプローチである傾聴の技術
前回はネギングについて説明したので、今回はネギングと対極的な技術である「傾聴」について説明したいと思います。
1 前回のまとめ
傾聴についての説明に入る前に前回説明したネギングの基本および分類について軽く触れておきたいと思います。
というのも両者は「女性をベッドまでエスコートする」という同一の目的を目指しながらも、そのアプローチは真逆のものであり、表裏一体の技術として相互参照することでより理解が深まると思うからです。
そこで、簡単に前回の投稿をまとめます。
まず、ネギングとは相手に対して一見否定的な振る舞いをあえてすることで相手の自分に対する興味・関心を誘発する技術でしたね。
これまでネギングの分類についてはあまり語られることなく単に「ネギング」とざっくり捉えられていたけれども、あえて分類すると、ネギングは強弱によって①からかい、②無関心、③ディスりの3種類に分類できます。
そしてこれらの3種類は、フェーズ(ACS)や相手のランクに合わせて使い分けることでより効果的になります。
①の「からかい」の技術は、3つのうち最もソフトなネギングで、一定の時間内に繰り返し使うことで「ボケ」「つっこみ」の役割論を相手に無意識的に引受させ、主導権をサイレントに委譲させる技術でしたね。
フェーズとしてはACSではCの段階で使う技術ですね。
②の「無関心」は、相手のマウンティングをいなす技術です。「私よく街で声かけられるんだよね」「私の彼氏モデルやってる超イケメンなんだ」みたいな、うんざりするようなマウンティングに対して、全く興味を持たない(無視する)ポーズを見せつけることで、相手の不安や焦りを駆り立てる技術でした。
ここで、「すごいね」「かわいいし、もてそうだよね」というのが非モテ的リアクションで、そのような回答をしてしまえば「クソテスト(中間テスト)」の落第者になってしまうわけです。
③の「ディスり」は、①の程度を強めたものです。
相手の好奇心を誘い出す技術ですので、当然相手がまだ自分に対して強い好奇心を持っていない段階、すなわちAの段階で有効といえます。
大まかに言うと、ざっとこんなところですが、詳細については前回の「ネギングの基本思想とその分類」をご覧下さい。
2 傾聴
(1)傾聴とはなんなのか
今回紹介するのは上記のネギングと対極的な技術である「傾聴」になります。
傾聴とは、字のごとく「相手の話に耳を傾ける」技術です。
ひたすら相手の話を聞いて全てに相槌を打つといったシンプルな技術で、カウンセラーの初歩的な技術でもあります。
聞くといった受動的な行為を、能動的に行うもので、アクティブ・リスニングといった方がわかりやすいかもしれません。
傾聴においては相手の発言を一切否定してはならず、相手が自分の価値観と全く異なることを言ったとしても際にもニコニコしながら「うんうん(^-^)」「そうだよね(^-^)」「たしかにね(^-^)」と全て相槌を打たなければいけません。
練習すれば誰でもできるとは思いますが、最初は意外とこれが難しいです。
たとえば、「カップルは結婚するまで寝ない方がいいと思うんだよね」とか「やっぱり付き合ったり結婚っていうのはお金じゃなくて全ては愛だと思うな」なんて、恋愛工学生ならば明らかに同意しかねる発言が出ても、「そうかな。だってさ、、」といった否定的な発言は許されません。
そのような発言をぐっとこらえて、傾聴モードに入っているときには「うんうん。そうだなんだね(^-^)」と軽く肯き、彼女に続きを喋らせることが重要です(これくらいの発言なら肯定することは難しくないかもしれませんが、たとえば自分の愛してやまないアーティストや自分が心から尊敬している人物に対する否定的発言があった場合、自分の思想的に受け入れられない発言をされた場合にも、何ら動じることなく相槌を打つのは意外と難しいんです)。
このように、ネギングが相手に対してあえて否定的な態度をとる否定的アプローチであるのに対して、傾聴は相手を全面肯定する肯定的アプローチであることが特徴的です。
(2) なんのために傾聴をするのか
ではなんのために傾聴を実践する必要があるのでしょうか。
カウンセリングにおいては、相手に自由にしゃべらせることでクライアントの情報を収集し病理の原因を探り当て、また相手にのびのびとしゃべらせる行為そのものによって相手の回復を促進するといったことが目的なんでしょう。
ですが、いまあなたは相手を治療しているわけではありません。
ここで想定しているのは、相手を口説いてベッドまでエスコートしている場面であり、このような状況において傾聴は、あなたが主導権を握り当該エスコートを迅速・円滑に運ぶために行われます。
ふつうであれば「話し手」と「聞き手」は一定のサイクルでスイッチしますが、「聞き手」のポジションにとどまり続けることが傾聴行為であり、どちらかというと「聞き手」のポジションにこそ主導権は埋め込まれています。
多くの人は、話の主導権は話し手が握ると誤解していますが、集団ならばともかく、1対1のコミュニケーションにおいては、主導権を握るのは間違いなく「話し手」ではなく「聞き手」です。
いくつか理由が考えれますが、ひとつには、話すことによって話し手は情報を開示し続けるだけですが、聞き手は出された情報や話題を取捨選択する選択権があり、話の方向性は話してではなく常に聞き手がコントロールすることがでるからです(聞き手が聞いてくれない話題については話しては諦めなければならない)。
また、もうひとつには、傾聴をやっている時間が長くなるほど、あなたは相手のことをいっぱい知っているけれども、相手はあなたの情報をあまり知らないといった保有情報量の非対称化が進むからです(相手の情報量を多く保有していれば、相手の選好を予測できますし、後に自分が相手の選好を自然に演じることも可能です)。
ネギングと逆のアプローチをしていますが、傾聴はネギングと同様に主導権を把握することにその関心があるのです。
(3) 傾聴を実践すると相手はどうなるのか
傾聴は、相手を全面同意することで前のめりにさせます。
自分の発言が一切肯定される場面なんて、現実の生活ではなかなか存在しません。
例外といえば、教育的配慮から幼児期の子の話を積極的に聞いてあげる母親や、キャバクラやホストクラブにいるキャバ嬢やホストになるでしょう。
このように、リアルな生活では自分の話を全面同意して聴き続けてくれる場面などないため、傾聴は相手にかなり強めの快感を与えます。
ちょっと脇道にそれますが、学生の頃、女の子を口説くために傾聴に目をつけていた僕は、傾聴のワークショップのようなところにいったことがありました。
そこで聞き手と話してに分かれて傾聴のロールプレイをしたことがありましたが、相手がわざと耳を傾けてくれているとわかっていても、一定時間自分の話が全面肯定されながら聞かれるというのは、まあきもちいいものです。
そして、日常生活の至る場面で傾聴を実践してきましたが、これをやっているうちは男女問わず好かれます(もっとも、疲れるので、途中からは意中の女の子のみに技術の利用を限定しました)。
特の女の子は自分の話を聞いてくれる人を信頼する傾向にあります。
よく、悩んでる女の子にアドバイスしてはいけないって言いますが、傾聴をやっているとまさにそのことを痛感するのですが、悩んでいる女の子は相手に意見を求めているのではなく、単に自分を肯定して欲しいだけなんです。
そして、肯定を続けているうちに、僕という肯定装置を利用して自分自身を客観的に捉え直し、僕なんかが下手にアドバイスるよりもよっぽどいい方向に自ら悩みを解決していきます。
なお、悩み相談を受ける男というのは得てしてその女の子にどんどん好意をよせられていくもので、僕は学生時代確実に非モテ的な思考でしたが、傾聴の技術によってお悩み相談キャラのポジションを確立していたので美人な彼女には困りませんでした(美人は悩みが多いから)。
話が脱線しました。傾聴の効果論の話に戻ります。
上記のように、傾聴は相手を全面肯定し、相手の話題にどこまでもよりそっていくサービスのようなものですから、これをやっていると相手がつい気持ちよくなってしゃべりすぎてしまいます。
そして、そこまで行けばひとまずナンパや屋口説きといった場面においてはその傾聴は成功していると言えるでしょう。
(適切な)傾聴をすすめていいくと、相手は無意識のうち聞き手によっかかってきます。
よっかかっていた壁が急になくなるとバランスを崩して倒れてしまうのと同じように、今までニコニコ全面肯定してきた聞き手であるあなたが、急に沈黙になったり、首をかしげでもしたら、相手はとても不安を覚えます。
それだけではなく、相手はさらにあなたの同意を得るために迎合してくることすらあります(ただ初対面でそこまで迎合的な人は経験上かなり危険なメンヘラとしてあとあと面倒くさいことになります)。
このようにして、傾聴技術は、相手が「話し手」、あなたが「聞き手」といった役割分担を形成することで、相手の依存性を引き出し、結果的に主導権も聞き手に移譲されるというわけです。
なお、カウンセリングでは話してをカウンセラーに全面依存させることは本来の目的ではないので、あまりよくないことなのでしょう。そう言う意味ではカウンセリング技術の悪用になってしまうのでしょう。
(3)傾聴の技術
若干話が抽象的になってしまったので、傾聴の技術について簡単に説明します。
カウンセリングにおいてはいろいろと細かく分類されますが、口説きにおいてはひとまず①相槌、②オウム返しさえ覚えておけば足りると思います。
①相槌は、そのまま相手の発言にあわせて相槌を打つことです。
特別な技術はいりませんが、大げさな相槌はよくないでしょう。能動的にポジションを奪いに行くネギングにおいては儀式的なわざとらしさが必要になりますが(詳しくは前回の投稿参照)、傾聴にはむしろナチュラルさが求められます。
また、相槌のパターンも少なくとも4つくらいは用意した方がよいです。
②オウム返しは、相手の行ったことを自分で復唱する技術です。相手の話を先に促すために行います。傾聴モードに入っているときは、とにかく相手にしゃべらせる必要があります。
相手が会話の中でつまづいたり、話題が次の方向性を見失っているような場合、相手が何を言いたいのかよくわからないときでも、焦ることなく、相手の最後の言葉を捕捉し、リピートしてあげます。すると、いったん止まっていた会話はネジをまかれたおもちゃのように再び動き始めます。
相手が「私って人のことほっとけないの。」のように、返しづらいしオチもなさそうで正直どうてもいいような話題をしたときでも、「ふ~ん。○○ちゃんって人のことをほっとけないんだ」とオウム返しします。すると、聞いてもいないのに相手は「うん。この前~~でね、~~~があってね」といった具合にどんどん話を進めていきます。
細かい技術はまだまだありますが、ひとまずこの2点にとどめておきます。
3 傾聴とネギングの合わせ技
上記が傾聴の技術でした。ひとまず大枠について説明しました。
これで、ネギングと傾聴の基本的な説明が終わりました。
ただ、上記の傾聴理論はあくまで同じコミュニティに所属する人物など、既に相手との一定の関係がある状況を前提にしていますので、職場、学校、バイト先の友人には効き目があるかもしれませんが、路上・合コン・クラブなどで知り合った比較的浅い関係の相手(初アポくらい)を相手に単にニコニコ傾聴していても実はあまり効果がありません。
ほぼ初対面の相手は一定程度こちらを警戒したり緊張しているでしょうから、傾聴を使ったとしても相手の依存性を引き出すのにも限界があります。
最悪の場合、相手に迎合するイエスマンとして非モテやβメールに映ってしまうかもしれません。
なので、そこで再びネギングの出番になるのです。
この、傾聴とネギングを適切な配分でハイブリッドさせることで、否定的アプローチであるネギングの「相手の自分に対する興味関心を誘い出す」という効果と、肯定的アプローチである傾聴の「相手の依存性を引き出す」という効果の両方を獲得することができます。
ネギングも傾聴も、両者をセットで使ってその真価を発揮させることができるのであり、両者の合わせ技をマスターすることが非常に肝要なんですが、長くなりすぎたのでいったんここまでにしておきます。
次回をお楽しみに。